どうも!ぶっさんです。
第74回 診療放射線技師国家試験 午前 10-11を解説していきます。
科目は診療画像機器学です。
歯科用コーンビームCTとデュアルエネルギーCTの特徴についての出題です。
機器の特徴をしっかり勉強していきましょう。
- マルチスライスCTと歯科用コーンビームCT
- デュアルエネルギーCT

比較的新しい技術に関する問題もあるね。
教科書には書いてないこともあるから、しっかり解説するよ!
第74回午前-10 マルチスライスCTと歯科用コーンビームCT
10. マルチスライスCTと比較した歯科用コーンビームCTの特徴で正しいのはどれか。
- 撮影時間が短い。
- 撮影領域が広い。
- 空間分解能が高い。
- 濃度分解能が高い。
- 画素濃度値の正確性が高い。

それぞれの装置の強みをしっかり抑えておこう!
マルチスライスCTと歯科用コーンビームCT

マルチスライスCTとコーンビームCTではどんな形のX線が出ているか思い出してみよう。
マルチスライスCTとコーンビームCTともに円錐や四角錐のようなかたちのX線が出力されています。
マルチスライスCTでは体軸(頭足方向)にも検出器を並べ、管球一周で複数のスライスの画像を得ることができます。
コーンビームCTではFPD(フラットパネルディテクタ)など二次元の検出器を使用し画像を取得します。
マルチスライスCTと歯科用コーンビームCTの特徴をまとめました。

歯科用コーンビームCTではFPDを検出器に使用するため、空間分解能は0.1✕0.1✕0.1mm3程度となります。
一方、マルチスライスCTでは0.25✕0.25✕0.25mm3程度が限界とされています。
また、歯科用コーンビームCTは骨構造に特化したものであるため、濃度分解能はあまり優れてはいません。
したがって、マルチスライスCTのほうが軟部組織の描出が優れています。
しかし、濃度分解能が低いがゆえに金属アーチファクトが少なくなるメリットもあります。
歯科用に限らずコーンビームCTではCT値の算出ができないために画像の定量性がないことも特徴のひとつです。
第74回午前-11 デュアルエネルギーCT
11. デュアルエネルギーCTで正しいのはどれか。
- サイクロトロンによる放射光を使用する。
- 高速スイッチング方式では、2つのX線管が実装されている。
- エネルギーが低い仮想単色X 線画像ではヨードのCT値が増加する。
- 通常のX線CTよりビームハードニングアーチファクトが増加する。
- 物質弁別において2つの基底物質は、実効原子番号が同一となる物質を選択する。

デュアルエネルギーCTに関する問題は初出題。少し詳しく解説するよ!
デュアルエネルギーCTができること

2種類のエネルギーでCTを撮影するとどんなことができるか見てみよう。
- 物質の弁別
- 仮想単色X線画像
デュアルエネルギーCTでは大きく2つのことができます。
まず、ひとつ目は物質の弁別です。
CT画像では似たCT値の組織が近接している場合がよくあり、例えば、造影されている血管内の石灰化などが挙げられます。
デュアルエネルギーCTでは、それらの物質を弁別することができます。
ふたつ目は、仮想単色X線画像を作成することができます。
CT装置の管球から照射されるX線は連続スペクトル(120kVpなど)を持っています。
二種類のエネルギーのX線で撮像し計算することで、あたかも単色X線(60keVや120keVなど)で撮影したような画像を作成することができます。
次にどのような原理でこれらのことができるのか見ていきましょう。
また、臨床ではこれらのできることでどんなことをしているか紹介します。
原理と臨床応用

まずは「物質の弁別」の原理と臨床応用を見てみよう。

まずはCT値の計算式を思い出してみましょう。
$$CT値=\frac{\mu-\mu_水}{\mu_水}\times1000$$
上式の「μ」は線減弱係数を表し、物質の原子番号・密度・X線のエネルギー依存して値は変化します。
もし、原子番号が小さく、密度が大きい物質(例えば石灰化)と原子番号が大きく、密度が小さい物質がある(例えばヨード:造影剤)とすると、2つの線減弱係数は等しくなる可能性があります。
つまり、2つの物質は異なる物質なのにCT値が一緒になる場合があるということです。
この場合、造影CT検査で血管内内の石灰化の評価が困難になるなどの支障で起こりえます。
ここで、デュアルエネルギーCTで低電圧と高電圧でCT値を測定してみます。
そして、縦軸を低電圧のときのCT値、横軸に高電圧のときのCT値をプロットしていきます。
(例えば、石灰化の場合、ある密度でCT値は低電圧、高電圧においてそれぞれ400、190であり、密度が高くなった場合では790、376であった。)
同一の原子番号の物質であれば、プロットは同一直線上にでき、プロットする位置は密度に依存をします。
一方、原子番号が変化すると、プロットの直線の傾きが変化します。
つまり、プロットした直線の傾きによって物質の弁別が可能となります。
ちなみに、実際のCT値はビームハードニングや散乱線でやや変化するために、同一物質と認識する直線の傾きにはある一定の領域(幅)をもたせています。
- ヨード密度画像(ヨードマップ):ヨード(造影剤)の分布を画像化
- 実効原子番号解析:腎臓結石・胆嚢結石などの成分評価

次には「仮想単色X線画像」の原理と臨床応用を見てみよう。

X線と物質の相互作用(光電効果・コンプトン散乱・電子対生成)は、X線のエネルギーと物質の原子番号に依存します。
したがって、診断領域のX線エネルギーである物質の相互作用の程度(線減弱係数μと同義)は以下の式で表現できます。
診断領域のX線エネルギーなので電子対生成は限りなく起きないと仮定しています。
$$\mu=\alpha\times f_光(E)+\beta\times f_コ(E)…①$$
ここで、α、βはある物質特有の光電効果とコンプトン散乱を作用する係数(割合)、\( f_光(E)\)、\( f_コ(E)\)は光電効果とコンプトン散乱を作用するX線エネルギーに関与する関数とします。
デュアルエネルギーCTで撮影すると低電圧と高電圧の画像からそれぞれのμが算出されます。
また、相互作用のエネルギーに関する関数は既知であるため、下記の連立方程式を解くと、物質特有のα、βが求められます。
$$\mu_低=\alpha\times f_光(低E)+\beta\times f_コ(低E)$$
$$\mu_高=\alpha\times f_光(高E)+\beta\times f_コ(高E)$$
求めたα、βを①式に代入すると、任意のX線線エネルギーでのμが求まります。
1ピクセルごとにこの計算を行いμを算出し、CT値に変換すると仮想単色X線画像が完成します。
- 造影効果の増強:低エネルギー画像を作成すると高コントラストな画像が取得可能
- アーチファクトの低減:単色なのでビームハードニング効果が減少させれる
デュアルエネルギーCTの撮影方式

どんな撮影方式があるか見てみよう。

高管電圧用と低管電圧用の2つの管球が90度ズレた位置に配置されている。
☺ エネルギーの分離が良い
☺ 管電流や管電圧を独立して制御可能
☹ 管球が2つ必要のため装置が高価
☹ 高管電圧の画像と低管電圧の画像では位相が90度ズレるため投影データは一致しない
☹ 散乱線が多くなる
短い間隔(数ms)で高管電圧と低管電圧で切り替えながら撮影する。
☺ ほぼ投影データは一致する
☺ 管球が1つのため比較的安価な装置にできる
☹ エネルギーの立ち上がりが必要なため、エネルギーの分離が悪い
☹ 低管電圧では線量が足りないため、長めの収集間隔となる(管電流を変化させれないため)
検出器側で高エネルギーと低エネルギーで分離する
☺ 投影データは完全に一致する
☹ 検出器が2層必要なので装置が高価となる
☹ 検出器でのX線受光効率が低下する(構造上の問題)
設問の解説

ボリュームが多くなってしまったね…ようやく設問を解説してみるよ。
11. デュアルエネルギーCTで正しいのはどれか。
- サイクロトロンによる放射光を使用する。
→放射光はマイクロCT(分解能が100nm程度)で使用されます。 - 高速スイッチング方式では、2つのX線管が実装されている。
→高速スイッチング方式はX線管球は1つ。 - エネルギーが低い仮想単色X 線画像ではヨードのCT値が増加する。
- 通常のX線CTよりビームハードニングアーチファクトが増加する。
→仮想単色X線画像の利用でビームハードニングの効果は減少する。 - 物質弁別において2つの基底物質は、実効原子番号が同一となる物質を選択する。
→基底物質(基準となる物質)は実効原子番号が異なる物質を選択する。
まとめ

今日もお疲れ様!デュアルエネルギーCTは僕が入職した約10年前に商品化されたよ。
国試の問題になるのに10年かかったね。
- マルチスライスCTと歯科用コーンビームCT
- デュアルエネルギーCT
今日の学習内容の難易度は標準だったと思います。
なかなか教科書に書いてない新しい技術なので、しっかりと覚えていこうね。